村井康彦:編■ 平安京の光と闇――貴族社会の実像
平安時代に入ると、ようやく、そこから、日本式な生活と文化とを産み出す力を日本の歴史は蓄えていました。
したがって、道真がここで遣唐使を停止してはどうか、という提案をしたことは、時宜を得たものとして、当時の宮廷でもただちに採用されたわけでした。〔…〕
和魂漢才というのは、あくまでも日本人であるという心構えで漢(中国)の学問を勉強する、という意味ではありますが、当時としては、その和魂というのは、のちに本居宣長がいっているような、「もののあわれ」という心情にも通じる、やさしい心構えをいうのです。
和魂という言葉は、〔…〕
和やかな・甘美な・もののあわれの解る魂のことを指す言葉として、用いられてきていたのです。
こうした言葉となるような自覚、それが、この時代から源平の争乱のころにまでつづく、約二百年ほどの間の国風文化の基礎となった力の一つであった、といえるでしょう。
和歌や物語は、この時代から、きわめて盛んに創りだされてくるようになるわけです。
――松島栄一「天神様――菅原道真とその伝説」
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■ 平安京の光と闇――貴族社会の実像:史話日本の古代8|村井康彦:編|作品社 |ISBN:9784878935336 |2003年06月
★★☆☆☆
《キャッチ・コピー》
京都1300年、華開く王朝文化に潜む精。山背遷都による都市貴族・俸禄社会の成立。中世への架け橋となるみやびの文学・国風文化の誕生。
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