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2008.12.05

紫式部/瀬戸内寂聴■ 源氏物語――巻1

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源氏の君は夢の中にまで恋いこがれていたお方を目の前に、近々と身を寄せながらも、これが現実のこととも思われず、無理な短い逢瀬がひたすら切なく、悲しいばかりです。

藤壷の宮も、あの悪夢のようであったはじめてのあさましい逢瀬をお思い出しになるだけでも、一時も忘れられない御悩みにさいなまれていらっしゃいますので、せめて、ふたたびはあやまちを繰り返すまいと、深くお心に決めていらっしゃいました。

それなのに、またこのようなはめに陥ったことがたまらなく情けなくて、耐えがたいほどやるせなさそうにしていらっしゃるのでした。

それでいて源氏の君に対しての御風情は言いようもなくやさしく情のこもった愛らしさをお示しになります。

そうかといって、あまり馴れ馴れしく打ち解けた様子もお見せにならず、どこまでも奥ゆかしく、こちらが気恥ずかしくなるような優雅な御物腰などが、やはり他の女君とは比べようもなく優れていらっしゃいます。

「どうしてこのお方は少しの欠点さえ交じっていらっしゃらないのだろう」

と、源氏の君は、かえって恨めしくさえお思いになられるのでした。

――「若紫」

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■ 源氏物語――巻1|紫式部/瀬戸内寂聴 |講談社 |ISBN9784062756334 200701月発売|文庫

★★★☆☆

《キャッチ・コピー》

桐壺/帚木/空蝉/夕顔/若紫

memo

この帖には、里帰りした藤壷とのやるせない一夜の密会が措かれ、その結果としての藤壷の懐妊という重大な問題がかかげられている。〔…〕二人の密会が、すでに過去に成就していたことが、ここではじめてはっきり示されている。この夜、藤壷は決して、冷たい態度ばかりを示したわけではないことも、紫式部は書き忘れていない。藤壷は老帝よりも自分に年の近い、若く美しい源氏と、その激しい情熱のしぶきに、心の底では抗い難い魅力の虜になっていたのである。(源氏のしおり・若紫)

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