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2008.12.06

紫式部/瀬戸内寂聴■ 源氏物語――巻2

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女は怖さにおののきながら、

「ここに、人が」

と、言うのですが、

「わたしは何をしても誰からも咎められないから、人をお呼びになっても何にもなりませんよ。そっと静かにしていらっしゃい」

と、おっしゃるお声に、女は、さては源氏の君であったのかと聞きわけて、少しはほっとするのでした。あんまりだとは思うものの、恋の情緒もわからぬ情のこわい女だと、源氏の君に思われたくもありません。

源氏の君は常にもなく深酔いしていたのでしょうか、このまま女を放してしまうのはいかにも惜しい上に、女も初々しくなよやかで、手きびしく拒み通すすべも知らないのでしょう。

源氏の君は、そんな女をしみじみ可愛いとお思いになって愛撫を尽くしているうちに、間もなく夜も明けそめてきましたので、心もせかされます。

まして女は、こんなことになって千々に思い乱れている様子です。

――「花宴」

*

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■ 源氏物語――巻2|紫式部/瀬戸内寂聴 |講談社 |ISBN9784062756495 200702月|文庫

《キャッチ・コピー》

末摘花/紅葉賀/花宴/葵/賢木/花散里

memo

廊下の向うから若い身分の高そうな女が「腰月夜に似るものぞなき」と歌を口ずさみながら歩いてくる。〔…〕自分は何をしても許されるという自信が、いつの場合も源氏を傍若無人にする。この段階では源氏は女が自分を目の敵と憎む弘徽殿の女御の妹、つまり右大臣の娘で、自分の兄東宮の婚約者(=朧月夜)だということは知らない。(源氏のしおり・花宴)

紫式部/瀬戸内寂聴■ 源氏物語――巻1

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