佐野真一■ 沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史
1953(昭和28)年12月、奄美諸島は沖縄に先駆けて本土復帰を果たした。それから本格的な奄美差別がはじまった、と奥はいう。〔…〕
問題は、彼らに対する沖縄人の露骨な差別と非人間的な扱いだった。この事実はほとんど知られていない。というより、沖縄の戦後史の暗部として、なかったことになっている。〔…〕
本土復帰で“日本人”になった、正確にいえば“非琉球人”になった奄美人には、“外人登録”が義務づけられた。
奄美の復帰から4日後の1953年12月29日、USCAR(琉球列島米国民政府)は指令第15号として、「奄美大島に戸籍を有する者の臨時登録」令を発令した。
奄美大島の日本復帰に伴い、奄美大島に戸籍を有する琉球列島在住者(以下奄美人という)はすべて、1954年2月1日以前に同日以降90日間の効力を持つ臨時外人登録証の発行を受けなければならない。〔…〕
これを皮切りに、USCARは奄美人の基本的人権を剥奪する指令を次々と出した。
公職からの追放、参政権の剥奪、土地所有権の剥奪、公務員試験受験資格の剥奪、国費留学受験資格の剥奪、融資の制限……。
その一方で、税金だけは琉球人並みに徴収された。すなわち、権利の剥奪に関しては非琉球人として扱われ、義務の負担に関しては琉球人と同列に扱われた。
――「空白の琉球弧――奄美群島」
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■ 沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史|佐野真一 |集英社インターナショナル|ISBN:9784797671858 |2008年09月
★★★★☆
《キャッチ・コピー》
沖縄の戦後60余年を作ってきた群雄たちを活写して、天皇と沖縄の微妙な関係、沖縄の戦後史に残る政治家、独立の夢に賭けた男たち、沖縄が現在抱える問題と将来の問題…。戦後日本を逆照射するルポルタージュ。
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