中林啓治/岩井宏実◆昭和を生きた道具たち
戦後、高度経済成長時代まで、居間の主役はなんといっても「ちやぶ台」であった。〔…〕
〔居間は〕実際は団欒とともに食事の場でもあった。炊事場と一体であったり、炊事場に隣接していることも多く、日常生活の中心的空間であった。その中心に据えられたのが、ほかならぬ「ちゃぶ台」である。〔…〕
ちゃぶ台で食事をするようになると、個人個人で食器・膳を持っていたそれまでの風習がしだいに消えていった。
このちゃぶ台は円形であることに意味がある。
食卓では一家全員揃うことが建前であるが、一人が留守であったり、気のおけない客と食事を共にするときなど融通がきいて便利であった。
また主婦が間近に全体を見渡せ、それぞれの労働や健康に応じて飯盛りを加減したり、家族の心身の管理にもきわめて有効であった。〔…〕
ちゃぶ台は子供が勉強するときも机としたり、ちょっとした仕事台としても用いられた。
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◆昭和を生きた道具たち|中林啓治・イラスト/岩井宏実・文 |河出書房新社 |ISBN:9784309727431 |2005年04月
★★★
《キャッチ・コピー》
新しくあらわれた、あるいは広まった道具と、伝承された古くからの道具の代表的な物を、生活空間のなかでとりあげる。過ぎ去った日の暮らしの情景をイラストでよみがえらせる。
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