城山三郎◆そうか、もう君はいないのか
2月に入ると、衰弱が目立つようになり、やがて起き上がれなくなって、モルヒネも使うようになった。ああ、もう別れるんだ、本当におしまいなんだ、と覚悟した。
2000年2月24日、杉浦容子、永眠。享年68。
あっという間の別れ、という感じが強い。
癌と分かってから4ケ月、入院してから2ケ月と少し。
4歳年上の夫としては、まさか容子が先に逝くなどとは、思いもしなかった。
もちろん、容子の死を受け入れるしかない、とは思うものの、彼女はもういないのかと、ときおり不思議な気分に襲われる。容子がいなくなってしまった状態に、私はうまく慣れることができない。
ふと、容子に話しかけようとして、われに返り、「そうか、もう君はいないのか」と、なおも容子に話しかけようとする。
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◆そうか、もう君はいないのか|城山三郎 |新潮社|ISBN:9784103108177 |2008年01月
★★★
《キャッチ・コピー》
甦る面影、声にならぬ悲しみ。最期まで天真爛漫だった君よ……。亡き妻との人生の日々を綴った、凛として純真な愛あふれる「妻との半生記」。感涙の絶筆。
《memo》
巻末の著者の次女の一文が、夫婦の“実像”を伝える。
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