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2009.01.16

朝倉かすみ◆田村はまだか

20090116asakuratamura

「お友だちとミドリ同盟をつくってたのよ」

「ミドリ同盟?」

「だんなが定年になったら別れましょうね、って同盟」〔…〕

かれは単純に驚いていた。

たしかに、離婚届の罫線の色はみどりだ。しかし、お友だちの主婦と寄り合っては、やれランチだケーキだデコパージュ教室だとでかけていっていた妻が、そんな「同盟」をつくっていたとは思いもよらなかった。

「いちばん乗りだわ、あたし」〔…〕

わっはっは、と、大笑したから、花輪春彦は咳き込んだ。猫背を丸め、胸をおさえる。ひゅーひゅーと穴から風が吹き込むような音を立てながら、細い息を吐いたり、吸ったりする。

その背なかに妻の声が投げつけられる。

「マンションと、こちらの預金は、あたしにください」

*

*

◆田村はまだか|朝倉かすみ |光文社|ISBN9784334925987 200802

★★★

《キャッチ・コピー》

深夜のバー。小学校クラス会の3次会。40歳になる男女五人が友を待つ。大雪で列車が遅れ、クラス会に間に合わなかった「田村」を待つ。人生にあきらめを覚え始めた世代のある一夜を、軽快な文体で描きながらも、ラストには怒涛の感動が待ち受ける傑作。

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