木村俊介◆変人――埴谷雄高の肖像
埴谷さんの作品も文芸誌も今はあまり読まれないでしょうね。
どの出版社でも文芸誌は赤字です。文学賞を発表するのに必要だからかたちの上で大事にされていますが、読まれないということは「文芸なんてなくてもいい」と社会が表明しているわけです。
そういうなかで編集者は大きな努力を強いられますが、努力しても求めている作品が生まれてくるわけではない。作家はむしろ危機感を感じていないように思えます。〔…〕
『死霊』よりも、作品以外の埴谷さんの言葉、いろいろな日々が好きですね。生き方から作品をどうこういえませんが、それでも埴谷さんの場合は作品以外の生き方に惹かれます。〔…〕
考えることが一つの行為になる人は日本にあまりいないですよね。埴谷さんは人生のほとんどを執筆以外に費やしています。
普通の作家は少し考えたことを割り増しして書きますが、彼は考えたもののほとんどを捨ててしまう。
生涯そういう賛沢なことをなさった人ですね。これでいいというところまで考えなければ書く意思がないという稀な人でした。
――「贅沢」宮田毬栄さん
*
*
◆変人――埴谷雄高の肖像|木村俊介 |文藝春秋|ISBN:9784167764012 |2009年03月発売 文庫
★★★★
《キャッチ・コピー》
ネット上の仮想大学に「埴谷雄高サイバーミュージアム」という膨大なページをつくり、巨人の実像に迫った。巨編『死霊』の作者をよく知る27人に徹底的にインタビューし、生前の埴谷雄高を生き生きと蘇らせた。
《memo》
じつは埴谷雄高を読んだことが無い。しかしインタビューに応じた27人の語る埴谷像だけでなく、27人それぞれの人生観、経歴も興味津々。
| 固定リンク
コメント