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2009.04.30

火坂雅志◆謙信びいき

20090430hisakakenshin

このトンバ文字、ナシ族なら誰でも書けるかというと、そうではない。現在、トンバ文字を書けるのは、たったの12人。宗教祭祀をつかさどる一族の長老、

――トンバ先生

だけが、正しくトンバ文字を伝えている。〔…〕

そのとき私の頭にふと浮かんだのは、良寛さんの「天上大風」の四文字だった。〔…〕

文字を見たとたん、眠そうにしていた老トンバ先生の目が突然、キラリと光ったような気がした。それから、やや間があった。老先生は数秒考え、おもむろに四つのトンバ文字を書いた。

その場では意味がわからなかったので、トンバの辞書を買い、後日、老先生が書いた文字を調べてみた。

一番目は「旗」、二番目は「血」、三番目は「箱」、四番目の字は「風」をそれぞれあらわすことがわかった。私が頼んだのは「天上大風」である〔…〕

しだいに謎がとけてきた。血の旗は、戦争を意味する。その戦争が、箱のなかにおさまり、あとにはただ悠然と風が吹いている。老トンバ先生は、良寛さんの言葉をそう解釈したのだ。

なるほど、良寛さんはただ子供にせがまれて、凧あげにふさわしい言葉を書いたのではない。そこには、老トンバ先生の解釈のとおり、深遠な意味がひそんでいたのではないか。

――「天上大風」

*

◆謙信びいき|火坂雅志PHP研究所|ISBN9784569705675200903

★★★

《キャッチ・コピー》

NHK大河「天地人」の直江兼続をはじめ、歴史上の異才に焦点を当ててその魅力に迫る。訪れた各地の味の話題も収録したエッセイ集。

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