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2009.06.06

上村一夫/久世光彦:原作◆螢子(上)(下)――昭和抒情歌50選

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嫌なことがあると髪を洗う。

今朝の場合、何が嫌だったかというと、暁方に、恥ずかしい夢を見て、身体中汗ばんだばかりか、頭の皮膚まで熱っぽく、淫らに湿っぽく思われて、目覚めると何はさておき、髪を洗うことにする。

髪を洗うと、女はとにかく新しい気持ちになれる。そう信じることにしている。

それは女にとって気持ちの句読点みたいなものだ。〔…〕

風に吹かれてだんだん乾いていくにつれて、気持ちが清々しく軽くなっていく。髪が乾いていくまでのしばらくの時間はつつましくハミングしたりする。

私は音痴だからめったに歌など歌わないのだが、洗濯物の具合を見たり、花の水をとりかえたり、肩のあたりの髪が揺れるのを楽しみながら軽い仕事をする。

小さな女の幸せだ。ドライヤーで乾かすなんてもったいなくてできない。

――「28章 失恋レストラン」

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◆螢子()()――昭和抒情歌50選|上村一夫/久世光彦:原作|ブッキング|ISBN9784835441771ISBN9784835441788200505

★★★★

《キャッチ・コピー》

昭和の絵師・上村一夫と、演出家・久世光彦のコラボレーション作品『螢子』。誰もが一度は耳にしたことがある数々の名曲をモチーフに描かれた本作は、昭和の濃密な空気を感じられる隠れた傑作。

memo

“愛唱歌”をあつかった久世光彦のエッセイ集に「マイ・ラスト・ソング」シリーズがある。「みんな夢の中」「月がとっても青いから」「ダニー・ボーイ」と続く。他に歌を扱ったものはと探したら、これ。1976年頃『週刊女性』に連載され、上村作品で「たったひとつ単行本にならなかったもの」(久世・あとがき)199610月、初単行本化(ISBN9784120026218)

久世光彦■ダニーボーイ

久世光彦■ マイ・ラスト・ソング最終章

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