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2009.06.26

呉智英◆健全なる精神

20090626gokenzen

NHKのドキュメンタリー番組に、俳句を詠みながら四国を遍路で回る80歳の男が紹介されていたが、彼は殺人未遂で指名手配中の容疑者で、番組を見ていた警察官が気づき逮捕された、という。〔…〕

この男、6年間も休むことなく連続して遍路で四国を回りっぱなしである。生活用具は手押し車に積んで、食料は「お接待」、泊まりは野宿である。

あるカメラマンはその姿に感動して写真集を出し、霊場の寺の住職はあなたに本当の仏様の姿を見ますと泣きながら拝んでいる。

80歳の老人が6年間も帰郷せず霊場を回りっぱなしだったら、普通変だと思わんか。どうも、日本人から世間知が失われたといおうか、うぶな奴らが「癒やし」をほしがっている、といおうか。

この男はどういうつもりでこんなことをしていたのだろう。司直の手を逃れるためだけではあるまい。やはり罪の償いをしたいと思っていたのだろう。しかし、霊場を遍路したって被害者には何の償いにもならない。

結局は自分の罪の意識を静めたいだけのエゴイズムなのだ

――「エゴイズムとしての遍路」

*

◆健全なる精神|呉智英|双葉社|ISBN9784575299762200706

★★★

《キャッチ・コピー》

爽快なる笑いは健全なる言論に宿る。腐った常識、病んだ良識に挑む最新評論・エッセイ集。

memo

明快コラム集。

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