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2009.06.08

穂村弘◆短歌の友人

20090608homuratanka

昨日はクルマの中で寝た

あの娘と手をつないで

市営グランドの駐車場

二人で毛布にくるまって

(「スロー・バラード」作詞・忌野清志郎)

この歌を初めて聞いたとき、「市営グランドの駐車場」という言葉の新鮮さに驚いた。

それまでラブソングの歌詞に出てくるのは、海やゲレンデや飛行場といったいわゆる絵になる場所かあるいは逆に木枯らしの駅や四畳半のような暗い場所だと思い込んでいた。

ところが、ここで歌われたなんの変哲もない「市営グランドの駐車場」の一語によって、街路樹の上に照る月や、フェンスの影、女の子の体温、草の窓が夜露に包まれてゆく感覚などが、聞き手である私の中に生き生きと建ってくるようだった。

同じ作者の別の歌には「薄着をしてきたことを後悔した」というフレーズがあった。これにもやられたと思った。〔…〕

おそろしくデリケートでしかも大胆なやり方で、忌野清志郎は誰にも掴めなかったリアリティを掴んでみせたのだ。

――〈リアル〉であるために

*

◆短歌の友人|穂村弘|河出書房新社|ISBN9784309018416200712

★★★

《キャッチ・コピー》

ニューウェイブ短歌をリードする歌人が短歌を読みながら短歌について考える。短歌の面白さを通じて世界の面白さに突き当たる、著者初の歌論集。酸欠世界のオデッセイ。

memo

若い歌人の短歌はことごとく“自己愛”だな。短歌って、気持ち悪るー。*忌野清志郎――20095月2日死去。

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