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2009.07.18

大森実★激動の現代史五十年

2004

長い廊下の右側は、中庭を隔てて向こう側がオーバル・ルーム(大統領執務室)になっており、廊下から窓越しにオーバル・ルームの中が丸見えになっていた。〔…〕

執務室内に、アイゼンハワーと吉田が2人揃って入場してきた。大統領が革張りの椅子に掛けると、吉田は藤椅子に腰を下ろした。大統領の背後にはロバートソン国務次官補、吉田の後ろには井口貞夫駐米大使が侍った。〔…〕

会談が始まると、冒頭、まずアイゼンハワー大統領が、大きなジェスチャーで手を振り上げ、振り下ろして何かを話す。それが大演説をしているように見えたので、僕はまずビックリした。

吉田首相は、銀の握りのついたステッキに自分の顎を乗せるようにして、ニコニコしながら「拝聴」するばかり。

ほんの三言か四言ばかり口を挟んだだけで、30分ぐらいかかった日米首脳会談は終幕した。

何だ、これは? 吉田が吉武記者に豪語していた、アメリカにいってやる!は一体どうなったというのか。

★激動の現代史五十年――国際事件記者が抉る世界の内幕大森実|小学館|ISBN9784093796293200406

memo

 ベトナム戦争のころ、毎日新聞はしばしば巨大な見出しがおどった。外信部長・大森実のスクープだ。

本書は50年間のジャーナリスト体験からの秘史証言である。これまでの著書のダイジェストの感がある。大森が毎日新聞をやめた経緯は『石に書く』(1971)にくわしい。

さて上述の「吉田が吉武記者に豪語」とあるのは、朝日新聞・吉武信政記者の「吉田単独会見記」という大特ダネ。活字化されたその吉田発言の一部……。

――日本を無力にしたのは米国ですからね。もう少しは元に還してもらわないと困る。占領で、労働法規の改正だ、財閥の解体だ、教育の民主化だ、中央集権の廃止だ、と日本を無力化することに一生懸命になった。〔…〕米国のある責任者は、私に再軍備をしろというが、夫や子供を失った人々が戦争に反対するのは当たり前で、共産党がこれを悪用する。いま国民投票をやっても、勝つ自信がないから、憲法改正も再軍備もできません。ハッハッハ。

これが日米首脳会談を前にした吉田談話であり、その後大森が偶然見た会談の風景は上述のとおりである。“国際事件記者”の面目躍如。

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