ノンフィクション100選★深夜特急(第1便)|沢木耕太郎
夜店の大ストリートが終り、しかし何の気なしに暗い夜道をもう少し先に行ってみることにした。そして再び驚いた。
なんということか大露店街はまだまだ続いていたのだ。いや、むしろ今までの通りは前奏、前菜にすぎなかった。
露店に沿って歩いていくと、廟があり、その前に広場がある。そこでは、ありとあらゆるタイプの香具師が出て、商売をしている。人相見、蛇使い、薬品売り、ガン治療法伝授、詰将棋、鳥占い。そして三つのチームが、唄と楽器を使って人集めをしていた。〔…〕
そこから、さらに、長い長い露店街が続き、人はここにも溢れていた。 その人々の流れに身を委ねながら、私は激しく興奮していた。なぜ自分がこんなに熱くなっているのかわからない。
しかし、とにかく、これが香港なのだ。今まで私がうろつき廻っていた場所などは、ここに比べれば葬儀場のようなものでしかなかった。
これが香港なのだ、これが香港なのだ……。
そこが廟街という土地であることは、宿に帰って地図で確かめて知った。
★深夜特急(第1便)|沢木耕太郎|新潮社|ISBN:9784103275053|1986年05月
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《memo》
いままで読んだ本のなかで、もっとも続編が待ち遠しかったのは沢木耕太郎『深夜特急』である。なにしろ第1便、第2便は1986年5月、そして続編をと本屋の新刊書コーナーを覗くたびにまだかと失望したものだ。第3便がでたのは実に6年後の1992年である。
バックパッカーという言葉のなかった時代、この本は若者のバイブルとなった。若者だけではない。上掲の香港・廟街を歩いたり、マカオ・リスボアのカジノへ“大小”をするために私も行きました。返還前の1990年でした。
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