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2009.07.17

夏目房之介◆本デアル

20090719natumehondearu

純文学だ、大衆文学だ、いやマンガだ、映画だという議論も次第にどううでもよくなった。自分にとって面白いかどうかだけを基準にするようなった30歳前後のころ、漱石『行人』や『三四郎』『それから』『門』の三部作を初めて読み、震撼した。

そこには、自分自身の問題だと思い込んで必死に考えていたことが如実に書かれているように思えたのだ。〔…〕

ああ、この人はやっぱり自分の祖父なんだと思った。精神構造の伝承と関係の客観性について考え込んだ。〔…〕

けれど漱石の中に自分を感じるのは、僕だけではない。僕が孫だから震撼したのではなく、漱石作品にそれだけの普遍性があつたから震撼したのだ。

そう考えると、僕が孫であることは漱石作品にとってはむしろ偶然で、僕の自意識にはそれが時を超えた必然のように思えただけなのだ。

漱石という名に恐怖を持たなくなったのは、それから少し後だった。

――「祖父三部作の震撼」

*

◆本デアル|夏目房之介|毎日新聞社|ISBN9784620319315200905

★★

《キャッチ・コピー》

祖父・夏目漱石の三部作、ヘルマン・ヘッセや吉本隆明、さらに手塚治虫や谷口ジローのマンガまで全56篇に及ぶ書評が、〈活字へのこだわり〉を凝縮させた必見の造りで一冊に!

memo

雑多な書評を集めたもの。祖父江慎の装丁デザインがいい。

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