小林信彦◆B型の品格――本音を申せば
そういうB型人間の悲哀を描いたのが夏目漱石の「坊っちゃん」だ。
漱石自身もB型だったはずで、愛すべき(とぼくは思う)「坊っちゃん」の語り手(主人公)を〈B型ヒーロ〉と名づけたのは、確か、大岡昇平さんで、大岡さんもB型だった。
「坊っちゃん」は、ずっと、文豪が片手間に書いた通俗小説扱いをされていた。これが悲劇と見られるようになったのは、1970年以降だという。〔…〕
しかし、表面のユーモアをはがしてみれば、これは〈B型ヒーロ〉の孤独、勘ちがい、怒り、立ち直りの早さ、敗北を、この上なく正確に描いた小説である。
「坊っちゃん」の主人公はB型人間の長所と欠点を背負っているが、なによりも品格がある。この品格は漱石自身のものであって、戦前戦後におびただしく出版された「坊っちゃん」を真似た小説とはその一点がちがう。
一息で書かれたにもかかわらず、文学史に吃立するのは、作品の品格のせいである。
――B型の品格
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◆B型の品格――本音を申せば|小林信彦|文藝春秋|ISBN:9784163713502|2009年04月
★★★
《キャッチ・コピー》
とにかく凝る、さっきと違うことを平気で口にする、だまされやすい…。B型人間は個性的。だからか、有名人にはなぜかB型が多い。「週刊文春」好評連載=クロニクル的時評、単行本化第11弾。
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