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2009.08.19

ノンフィクション100選★おい癌め酌みかはさうぜ秋の酒|江国滋

Nonfiction100

1997

710日(木)曇、雨

W先生、いきなり週末の外泊をすすめる。うれしいと同時にびっくりもする。それ以上に疑心暗鬼。もはや手のほどこしょうがないので、いまのうちにせめて一度だけでも、家に帰らせてやろうという最後の温情ではないのか。〔…〕

「失礼きわまりない質問ですが」と前置きして、ずばりたずねたら、そんなバカなことはぜったいないと一笑に付される。〔…〕

今日までの4回の手術を含め、いろいろなことをやってきたのは、なんのためだ。これでも、患者さんのためを思い闘ってきているのだ。癌と闘うなとか、尊厳死などということが、今はやりだが、わたくしは絶対にくみしない。〔…〕

「うれしいです。そういっていただいて」と答える。その答えに嘘いつわりはないのだが、疑念もまた捨てられない。これが患者の限界だろうか。

五時半『俳研』中西氏来。「癌め」第1回掲載の見本誌、5冊持参。書店用のびらも。感慨無量なり。

★おい癌め酌みかはさうぜ秋の酒――江国滋闘病日記|江国滋|新潮社|199712月|ISBN9784103032146

memo

日記も闘病ものもノンフィクションの一分野である。本書は、19972月に食道癌の宣告を受け、同年810日死去するまでの江国滋の日記である。上掲は死のちょうど1か月前。疑念が捨てられない気持ちが生々しい。享年62

 俳句入門では江国滋の著作にお世話になった。『俳句と遊ぶ法』(1987=文庫版発行年。以下同じ)では俳句の基礎を、『滋酔郎俳句館』(1989)では俳句エッセイの楽しさを、『旅ゆけば俳句』(1989)では俳句も旅行も無用の用ということを、『俳句旅行のすすめ』(1999)ではあらかじめ作って出かけるなどの“こつ”7か条を学んだ。

『おい癌め酌みかはさうぜ秋の酒』とともに句集『癌め』(1997)がある。以下、7句。

残寒やこの俺がこの俺が癌(2)

春遅く一挙手一投足不如意(3)

パジャマ脱ぎ捨て手術衣に更衣(4)

夏立ちぬ腹立ちぬまた日が立ちぬ(5月)

一喜一憂の憂ばかりなり梅雨に入る(6月)

外泊やかういふ喜雨もありぬべし(7月)

やよ酌めよ冷も吟もなき通夜の酒(8月)

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