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2009.09.18

ノンフィクション100選★実録自民党戦国史|伊藤昌哉

Nonfiction100

1982

政治には一種の狂気がある。

解決を迫られるいろいろな難問の中で、生きようともがく政治家の精神は異常な高ぶりを示し、そこから通常では考えられないような行動が出るものだ。

この時、大根役者が突然、千両役者に変じたり、異常な能力の持ち主が、へんにおびえてポカをしでかしたりする。

そこに人間喜劇の展開がある。

だが、われわれの日々の生活や運命までが、このような政治家たちの思惑に深く結びついて、それが現代という社会の歴史となってゆくのだと知ったら、人々はそのことにひどく腹を立てるだろうし、戦慄することもあるだろう。

★実録自民党戦国史――権力の研究|伊藤昌哉19828月|朝日ソノラマ

 1970年代は「三角大福」の時代であった。田中(19727−197412月)→木武夫(197412−197612月)→田赳夫(197612−197812月)→平正芳(197812−19806月)の順に首相をつとめた。

『自民党戦国史』は、その「三角大福」闘争史である。派閥抗争を描くのが主眼であり、たとえば1972年の中国との国交正常化など、わずか12ページの記述にとどまっている。それにしても政治は、与党対野党ではなく、与党内派閥対派閥でおこなわれていたことがよくわかる。

著者の伊藤昌哉は、大平正芳、宮沢喜一とともに池田勇人総理の秘書官を経て、のちに大平正芳の側近、相談役として政治の裏側で活躍する。金光教の信者であり、「取次」(信者の悩み事や願い事を教祖が聞いて神に伝え、神から返ってきた教えを信者に伝える)がしばしば登場する。神の占いによって政治が動かされる。レーガン大統領ナンシー夫人の占星術の例があるが、新しい鳩山内閣は鳩山幸夫人のオカルトによって首相の判断が行われることがあるだろうか。

それはともかく福永文夫『大平正芳』(2008)によれば、「歴史・言葉・文化の持つ重みを、含羞を持って受け止めることのできる政治家」、“含羞の保守政治家”であったとしている。

そういえば「大平総理の政策研究会報告書」(1980)の『文化の時代』、『文化の時代の経済運営』など仕事の参考にと当時ねっしんに読んだ記憶がある。

現職の総理の死去に焦点をあわせたノンフィクションに、医療と政治の葛藤として描いた三輪和雄『総理の病室』(1982)、既存の諸著作から証言を寄せ集めた国正武重『権力の病室――大平総理最期の14日間』(2007)がある。

 また同じ時代の派閥闘争史に戸川猪佐武『小説吉田学校』(19741980。全7巻。文庫化に際し第8巻を書下ろし=1981)がある。小説仕立ての実名入り政治ものは、その後、大下英治によって80年代後半から現在もなお“政局年鑑”のように延々と書き継がれている。

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