乙川優三郎◆闇の華たち
「この間、雪を見ました、夜でしたから夢だったかもしれません」 「そういう季節になった、そのうちまた降るだろう」〔…〕 一家の不幸は娘自身のせいではないが、親の哀しみを考え、親のために残す言葉が彼女の行き着いた終わりであろう。 「わたし、死んだら雪になります、父や母にそっと触れられるから」 彼女はいくらか興奮して、いま言っておかなければならないというように話した。 「初雪には間に合いませんでしたが、もうじきそうできるでしょう、母の髪や父の肩に舞い降りて、暖まったら解けてゆきます、でも二人には内緒です、傘を差さなくなると困りますから」〔…〕 「さあ、少し眠りなさい」 ――「冬の華」 |
◆闇の華たち|乙川優三郎|文藝春秋|ISBN:9784163280905|2009年04月
★★★
《キャッチ・コピー》
苦境の淵でもけなげに生きる人達を精緻な文体で描く時代小説集。
《memo》
藤沢周平の後継、乙川優三郎にしては完成度の低い短編集。
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