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2009.10.22

ノンフィクション100選★「話の特集」と仲間たち|矢崎泰久

Nonfiction100

2005

「新しいプランは? 誰かいい執筆者は?」

現れると二言目に和田誠が聞く。私がボソボソと伝えると、がっかりした表情をして、首を横に振る。ほとんどの人選が彼には気に入らないのである。〔…〕

「もっと、新しい人いないの。今活躍している人より、これから世に出る人を探そうよ」

和田誠の言う通りではあったが、それが難しい。〔…〕

表紙を担当して貰うことになった横尾忠別もちょくちょく編集部に顔を見せるようになった。

和田誠の紹介で谷川俊太郎、寺山修司が時々編集会議に参加してくれるようになった。〔…〕

創刊への企画ブレーンは一気に増えた。と、同時に企画ばかりが先行して、どんな雑誌になるのか、かえってわからなくなった。私は創刊を間近にして、焦っていた。

★「話の特集」と仲間たち|矢崎泰久|新潮社|20051 ISBN9784104736010

memo

 矢崎泰久が編集し和田誠がアートディレクションを行った『話の特集』は、1965年に創刊されたサブカル・ミニコミ誌の草分け。30年後の1995年に休刊したが、本書は創刊前後の5年間のエピソードを綴ったもの。

 メジャーになる前の新進気鋭の作家、写真家、イラストレーターなどがつぎつぎ登場した。わたしは“中綴じ”の雑誌が好きで、1970年前後から毎月買った。寺山修司・宇野亜喜良「絵本千夜一夜」、植草甚一「緑色ズックカバーのノートから」、深沢七郎「人間滅亡的人生案内」、永六輔「芸人その世界」などを愛読した。

 1970年代は雑誌の時代、とりわけサブカル・ミニコミ誌の時代だった。

梶山季之責任編集の『噂』(19711974)は「活字にならなかったお話の雑誌」というキャッチフレーズだったが、小説が載っていない「オール読物」「小説新潮」のようだった。その全貌は「梶山季之と月刊『噂』」(2007)としてまとめられている。

佐藤嘉尚の『面白半分』(19711980)は、「面白くてタメにならない雑誌」は吉行淳之介を初代編集長とし、半年ごとに編集長が替わった。野坂昭如編集長時代に「四畳半襖の下張」を全文掲載し裁判ざたとなった。五木寛之編集長は「日本腰巻文学大賞」を創設した。佐藤嘉尚「『面白半分』の作家たち」(2003)がある。

萩原朔美・高橋章子の「投稿雑誌」『ビックリハウス』(19751985)、天野祐吉の『広告批評』19792009)、岡留安則の「人はこれをスキャンダル雑誌という」『噂の真相』(19792004)。総会屋系の新左翼雑誌『現代の眼』『月刊ペン』『新評』『流動』『マスコミひょぅろん』。

このほか、まぼろしの雑誌といってもいい佐藤正晃の『TOWN(タウン)』、植草甚一の「ワンダーランド」(1973)があった。

現在も続いているのは、篠田博之の「メディア批評」『創』(1971~)、椎名誠・目黒孝二らが創刊の「書評とブックガイド」の『本の雑誌』(1976)のみである

『話の特集』は、これらミニコミ誌に影響を与えた先駆的雑誌である。和田誠、黒田征太郎のセンスがすみずみまで行きわたり、イラストレーションが市民権を得るのに貢献した。休刊10年後の2005年に40周年記念号という同窓会的復刊号がでたが、あれは余分だった。また本書は回顧録であるが、資料としての正確性にはやや疑問がある。

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