梯久美子◆昭和の遺書―55人の魂の記録
昭和がもたらした陶酔も傷も悔恨も、日本人は忘れてしまったように見えて、実は深いところでいまだに引きずっているのではないだろうか。〔…〕 戦争を知らず、昭和が終わったときまだ三十歳になっていなかった私でさえ、いま自分が生きているのは、平成ではなく、昭和の続きという時代なのかもしれないと思うことがある。 昭和史について調べたり考えたりしているとなおさら、平成の二十年間が、なんだかのっべらぼうで平板なものに見えてくるのである。 日本人にとって、決していいことばかりではなかった昭和という時代を、なぜ私たちは何度も振り返り、反芻し、いとおしむのだろうか。 それは、個人の人生が、歴史と激しく交差した時代だったからだろう。 すべての国民が否応なしに歴史の渦に巻きこまれた。生者は時代の直接の証言者となり、死者たちは歴史の中の死を死んだ。こんな時代は、あとにも先にも昭和だけである。 |
◆昭和の遺書―55人の魂の記録|梯久美子|文藝春秋|ISBN:9784166607136|2009年09月|新書
★★★
《キャッチ・コピー》
昭和ほど多くの遺書が書かれた時代はない。遺書でたどる昭和史、決定版。
《memo》
昭和は戦争がすべて。
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