宮脇俊三◆終着駅
古今東西の万巻の書のなかから、たった一冊だけ選ぶならば「時刻表」になるだろう。〔…〕 名著とは、浅く読んでも深く読んでも、人さまざまな視点から読んでも、それなりにおもしろい本を指す、と私は定義している。 また、微細な各論を坦々と並列または積み重ねるだけで、いつのまにか読者に巨大な像を結ばせるような書物こそ、読みごたえがあると思っている。 総論や結論は立派でも各論の薄弱な本は読んでも血や肉にならない。 その意味で「時刻表」は汲めども尽きぬ興趣にあふれた読みごたえのある本、と言えるのではないか。 たとえば、主要な幹線や大都市近郊のページを開いてみる。特急、急行、快速、鈍行などがひしめき合い、抜きつ抜かれつで走っている。一本の線路を奪い合い、ゆずり合いながら、多数の列車が、なんとかやりくりをつけている。苦しまざれに鈍行が急行を抜くという珍現象もあり、推理小説の材料を提供する。 ――時刻表を読む楽しみ |
◆終着駅|宮脇俊三|河出書房新社|ISBN:9784309019383|2009年09月
★★
《キャッチ・コピー》
デビュー作『時刻表2万キロ』と『最長片道切符の旅』の間に執筆されていた幻の連載「終着駅」。鉄道を最果てまで乗り尽くした著者が書き残していた終着駅への旅路。宮脇俊三最後の随筆集。
《memo》
このごろ河出は、単行本未収録作品集が得意なようで。
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