小林信彦◆黒澤明という時代
改めて思うことだが、〈黒澤流ヒューマン・アクション〉が存分に発揮されたのは、「姿三四郎」(昭和18年)から「天国と地獄」(昭和38年)までであった。長い時間が過ぎたから、冷静に判断できるのである。
太平洋戦争末期から公害まみれの東京オリンピックの前年まで――それが黒澤明という名の象徴する時代であった。敗戦・戦後から歪んだ高度成長まで、と言ってしまっては、単純化しすぎるのであるけれども。
そして、名前が巨大になり過ぎた。それ以後は、絵画的で静的な世界に沈んでいった。私はそう見ている。
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◆黒澤明という時代|小林信彦|文藝春秋|ISBN:9784163717203|2009年09月
★★★★
《キャッチ・コピー》
〈世界のクロサワ〉の全作品をその公開時に見ることをつづけてきた著者が書く、時代と格闘してきた映画作家の栄光と挫折、喜びと苦悩。
《memo》
“老いたり”の感つよく、リアルタイムで小林信彦の新著を読むのも残り少なくなってきたと思っていたが、映画の話となると“小林ぶし”衰えず。
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