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2009.11.28

竹中労◆無頼の点鬼簿

20091128takenakaburai

五所平之助監督からいただいた署名入りの三冊の本のひとつに、発句が誌されている。「鯛焼やいつか極道身を離れ」、自撰句集の中にある名作だが、私にあてての訓戒(?)ともうけとれた。〔…〕

ちちははに背き来りし島の春」、五所平之助という映画作家の芯底には、そもそも暗さがデカダンスがある。妾の子であった、生みの親を母と呼べなかった、映画監督を志願して勘当された、自殺をはかったこともあった。〔…〕

某日、私は不躾けに聞いてみた。「先生の作品のうち8割までは、映画会社との妥協の産物でしょう?」

「いや、ほとんど全部ですよ」

と、五所さんは微笑して答えた。「ほんとうに撮りたいものは、監督になって34年目にみんな撮っちゃったんですよ。むろん会社の言いなりじゃないけど、どこかで妥協しなくちゃ、映画監督という商売は悲しいことに成り立たないんです」〔…〕

いつか極道身を離れ、「鯛焼のような映画を作ってきて」と、言えばご本人の自嘲に似た感慨でもあったのだろう……

――「曼珠沙華、炎の中に瞑りたし」

◆無頼の点鬼簿|竹中労|筑摩書房|ISBN9784480422859200709月|文庫

★★★

《キャッチ・コピー》

自ら無頼と称し、無頼を生き抜いた著者が人生の途上において共感共鳴したひとびと…三島由紀夫、梶山季之、高橋鐵、羽仁五郎、美空ひばり、嵐寛寿郎、父竹中英太郎…ある時は師とあおぎ、ある時は世間の逆風を受けつつも援け、ある時は遠くからその死に衝撃を受けたひとびとを万感の想いを込めて追悼する。

memo

文庫オリジナル編集。屈折した難解な文章を書く人も少なくなった。

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コメント

五所平之助 5句
沈丁や夜でなければ逢へぬひと
呼びとめて二人となりぬ花明り
降る雪が別るゝひとの瞳にも降る
生きること一と筋がよし寒椿
鯛焼やいつか極道身を離る

投稿: kobe@random | 2009.11.29 19:36

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