北方謙三◆三国志(11の巻)
劉備は、斜面の手前に立ち、ぼんやりと長江に眼をやっていた。〔…〕 「おまえは、止めたな、私を。魏こそがまことの敵であると。そんなことは、私にはわかっていた。関羽と張飛を殺した者が、まだ生きている。それが、耐えられなかっただけなのだ。そして、兵を出した。大将の資格はあるまい」 「それ以前に、人として、男としてのありようを、陛下は大事にされたのだ、と私は思っております。孔明殿の戦略を優先されれば、天下への道は近かったと思います。 しかし、人としての思い、男としての思いを捨ててまで、なんの天下だ、と陛下は思われたはずです〔…〕」 「もうよい、超雲」 「孔明殿も、そう考えたはずです。人の思いを失った天下であってはならないのです」 |
◆三国志(11の巻)|北方謙三|角川春樹事務所|ISBN:9784894569669|2002年04月|文庫
《キャッチ・コピー》
そして孔明は、呉蜀の決戦の果てに、遺された志を継ぐ。北方“三国志”衝撃の第十一巻。
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