北方謙三◆三国志(2の巻)
「俺は、おまえのためには闘おうと思う」 「そう言ってくださるだけで、私は嬉しいのです。でも、男なら自分のために闘うべきなのです。そういう男にこそ、女は魅かれるのです。生涯を捧げてもいいという気になれるのです。高が女のために闘って、大きな戦などできませんわ」 「わかった、わかった」 呂布(りよふ)は、瑶(よう)の頬に掌を置いた。衰えた肌だった。自分とともに衰えてきたのだ、と思うとそれさえいとおしい。 胸に抱かれたい。躰が縮んで、そのまま子供になりたい。いや、もっと小さくなりたい。生まれ出る前の姿になって、瑶の腹の中で眠っていたい。時々、強烈にそう思うことがあった。 「もう行くぞ」 |
◆三国志(2の巻)|北方謙三|角川春樹事務所|ISBN:9784894568754|2001年07月|文庫
《キャッチ・コピー》
秋(とき)の風が波瀾を起こす、北方<三国志>第二巻。
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