中村安希◆インパラの朝――ユーラシア・アフリカ大陸684日
アフリカの貧困を見極めて、貧困の撲滅を訴えて、自愛に溢れる発想を誰かに示すはずだった。先進国の豊かな知恵を貧しい人に紹介し、不幸そうな人を探して幸福を与える夢を描いた。 けれど、あてがはずれてしまった。なぜなら、予想していた貧困が思うように見つからなかったからだ。想像していたほど人々は不幸な顔をしていなかった。 私はしばらく混乱し、テーマも話題も失った。そしてある時、愕然とした。私がやろうとしていたことは、旅の意義に逆行していた。既成概念を設定し、そこから逆算しようとしていた。〔…〕 アフリカは教える場所ではなくて、教えてくれる場所だった。助けてあげる対象ではなく、助けてくれる人々だった。アフリカは貧しい大陸ではなく、圧倒的な豊かさを秘めた、愛されるべき大陸だった。 |
◆インパラの朝――ユーラシア・アフリカ大陸684日|中村安希|集英社|ISBN:9784087814347|2009年11月
★★★★
《キャッチ・コピー》
26歳の私は、ユーラシア・アフリカ大陸へ2年間の旅に出る。「その地域に生きる人たちの小さな声に耳を傾けること」を主題に。中国、チベット、インド、パキスタン。アラビア半島からアフリカ大陸へ渡り、ウガンダ、タンザニア、ザンビア、ジンバブエ……、47カ国。新たな才能による次世代ドキュメンタリー誕生!
《memo》
省略のきいた、しかしすこし気取った文章。星野博美に次ぐ若い女性による旅の本の登場。第7回開高健ノンフィクション賞受賞作『バックストリートの星たち――ユーラシア・アフリカ大陸、そこに暮らす人々をめぐる旅――』を改題。文庫化のときはまたタイトルが変わるのでは……。
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