仲代達矢◆老化も進化
作品は『七人の侍』。シーンは映画の冒頭、私は科白もなくただ歩いて通り過ぎるだけの野武士の役でした。 朝一番のリハーサルで、突然「歩き方がなってない」と、黒澤監督の怒鳴り声が飛んできたのです。 「だめ、だめ、カット、カット!」〔…〕 でき上がった映画を見に行ったら、私のシーンはほんの一瞬、もちろん出演者の字幕に名前も出ていません。〔…〕 後年、黒澤監督から、映画の出演依頼を受けました。 『七人の侍』のエキストラで味わった屈辱が甦り、一度はお断りしたのです。すると監督からお呼びがあり、「どうして断るのだ、斬られ役だが、主役に対抗できる存在感のある役者がほしいのだ」とまで言われました。それが『用心棒』です。 エキストラだった私のことなど記憶にないと思ったのですが、「あの時の君を覚えていたから使うのだ」といわれた時は、正直、感激しましたね。 |
◆老化も進化|仲代達矢|講談社|ISBN:9784062725859|2009年06月|新書
★★★
《キャッチ・コピー》
「赤秋」を迎えた老役者の「孤独を楽しむ生き方」。
《memo》
「人間の条件」から「用心棒」「乱」まで仲代達矢の多くの映画を見てきた。本人自身は意外と平凡な人生、平凡な人生観。
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