山城新伍●おこりんぼさびしんぼ ――若山富三郎・勝新太郎無頼控
若山富三郎、勝新太郎という兄弟と付き合ううちに、ぼくは自分の人生をこの二人に乗っ取られるのではないかという恐怖を感じ始めた。〔…〕 二人は唯一無二のライバルなのだ。他の役者では絶対にその代わりにはなれない。 若山富三郎、勝新太郎。そこに杵屋勝東治さんという二人の父親の存在が加わり、三つ巴となる親子芸人の愛憎を、ぼくはずっと見続けてきた。 彼らがいるところ、すべてが舞台だった。 ぼくの人生はその舞台を見ることに、いやその舞台の脇を固めることに、ずいぶん時間をかけることになるのだった。 乗っ取られるかもしれないという恐怖は、いつの間にか消えていた。それは、もはや、乗っ取られていたからだ。 |
●おこりんぼさびしんぼ ――若山富三郎・勝新太郎無頼控|山城新伍|廣済堂出版|ISBN:9784331654330|2008年09月|文庫|評=○
<キャッチコピー>
長く復刻をまちのぞまれた本作が、10年の歳月を経てついに文庫化!芸能史に燦然と輝く偉大な兄弟を誰よりも近くで見つめ続けた俳優、山城新伍が鮮烈に描く、書き下ろし痛快エッセイ。
<memo>
“役者馬鹿”若山富三郎。勝新太郎がフツーの人に見える。浅草キッド・水道橋博士が『本業』のなかで以下のように絶賛していた。――「『現代・河原乞食考』などなど。山城本に駄作なし!今まで読んできた全タレント本の中でベストと胸を張って紹介するのが、本書、『おこりんぼさびしんぼ』なのである。この本は何度も読み返したが、頁を捲くるたびに深く浸り、物語を反芻し惚れ惚れとしてしまう」。
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