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2010.01.13

司馬遼太郎●坂の上の雲(五)

20100113sibasaka05

山頂に達した児玉[源太郎]はそこで伏せ、稜線に双眼鏡を出して二〇三高地の頂上をちかぢかと展望した。

死んでいる者、生きて動いている者がよくみえた。山頂の一角をなおも死守している百人足らずの兵の姿が、児玉には感動的であった。かれらは高等司令部から捨てられたようなかたちで、しかもそれを恨まずに死闘をくりかえしている。

「あれを見て、心を動かさぬやつは人間ではない」

と、児玉は横の福島[安正]にいった。参謀なら、心を動かして同時に頭を動かすべきであろう。

処置についてのプランが湧くはずであった。頭の良否ではない。心の良否だ、と児玉はおもった。

そう思ったために、かれの有名な怒声の場面が、そのつぎに炸裂するのである。〔…〕

(たれも責任を感じてはいない! 

と、児玉はおもった。責任を感じているならこの場でもすぐ処置があるべきであった。ところがみな見学者のように無責任な顔をしている。

――「二○三高地」

●坂の上の雲(五)|司馬遼太郎|文藝春秋|1978|文庫|評価=○

<キャッチコピー>

強靱な旅順要塞の攻撃を担当した第三軍は、おびただしい血を流しつづけた。一方、ロシアの大艦隊が、発航した。これが日本近海に姿を現わせば、いま旅順港深く息をひそめている敵艦隊も再び勢いをえるだろう。それはこの国の滅亡を意味する。が、要塞は依然として陥ちない。

<memo>

「兄の[秋山]好古からも艦隊へ手紙がきた。その手紙を嫂にみせるため真之は懐中に入れてきたが、しかしそれをお貞[]の目に触れることをおそれ、ついに出さなかった。好古の手紙というのは、弟の進級を祝ったあと、『一家ノ滅亡、患フルニ足ラズ。兄弟トモニ未曾有ノ国難ニ斃ルルヲ得バ一生ノ快事、ト今後ノ舞台ヲ相楽シミ居リ候』と、ある」(「海溝」)

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