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2010.01.31

黒鉄ヒロシ●色いろ花骨牌

20100131kuroganeiroiro

いかなる経緯からか、腔外射精の話となり、何気なく「あれは妊娠の怖れがありますからね」と口を挟むと、卓上の三人の手が止まった、ように感じた。

視線を牌から上げて、御三方のご尊顔を拝し奉ると、各様に眉を上げたご表情。

さては言葉足りなかったかと「いえ、あの、先っぽがちょいと濡れますところの、カウパー腺液とやら言うんでしたっけ? あの中にも精子が含まれておりまして…」

聞き齧りの、我が膣外射精危険説は却下された。

「数十年、その技に頼りシも、我、かくなる仕儀と相成りしことの一度としてあらざるなり」「阿呆も休み休みに」「記憶違いであろう」。

翌日、「あー、吉行です。昨夜の膣外射精野郎は、そのうち手痛い目に遭いますな。いや、貴君が正しい、正しい」。

医者に確かめたのだと言う。

本田[靖春]さんからも電話。

やはり、確認されての訂正であった。

続いてその夜も麻雀の約束があり「乃なみ」に着いて襖を開けてみると、先着の結城[昌治]さんが畳に平伏している。

「昨夜の暴言、誠に申しわけなや、腹を切ろうか、首を吊ろうか」

御三方は連絡を取っ合ったわけではなく、個別の調査による訂正であった。

●色いろ花骨牌|黒鉄ヒロシ|講談社|ISBN9784062126250200411月|評=△

<キャッチコピー>

いまは亡き、懐かしい、魅力溢れる人々。麻雀を通じて知り合った芸術家たちを、心優しくえがいたエッセイ集。

<memo>

吉行淳之介/阿佐田哲也/芦田伸介/園山俊二/柴田錬三郎など故人の“ばくち”交遊エピソード。

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