浅田次郎●ま、いっか。
「日本の女性は、ひとめでそうとわかるね」〔…〕 「華奢で小さいのは、コリアンもチャイニーズも同じだが、ジャパニーズは猫背で前かがみに歩く。まるで何か悪いことでもしているみたいに」 ショーンはホテル・フラミンゴの名物ピアニストだった。〔…〕30年の間、ピアノごしに行きかう世界中の女性を眺め続けてきたのだった。 「ガードマンがしばしば日本人の女性にパスポートの提示を要求するのは、こそこそした歩き方が怪しげに見えるからさ。きっと彼女たちは、ハッピーな誤解をしているだろうけれど」 カジノのゲーミングは、21歳以上と定められている。つまりガードマンからIDの提示を求められた日本人は、自分が20歳未満に見られたという、幸福な誤解をするのである。〔…〕 常に誇らしく自己主張をすることが、一種の社会的モラルとされているアメリカでは、まるで人目を憚るように背を丸めていること自体、十分怪しげに見えるのであろう。 まして小さな体に持て余すショッピング・バッグのネームは、アメリカの常識ではほとんど若い女性とは縁のない超高級ブランドである。 ――「ホテル・フラミンゴにて」 |
●ま、いっか。|浅田次郎|集英社|ISBN:9784087712858|2009年02月|評=○
<キャッチコピー>
いつも背筋を伸ばし、鉄の心を忘れるな。粋に、一途に、ゆうるりと。ビューティ誌MAQUIAに連載のエッセイ。浅田次郎が発信するオヤジ目線の現代考。
<memo>
浅田次郎の代表作といえば『蒼穹の昴』だろう。これがドラマ化された。さすがNHK、「坂の上の雲」といい「蒼穹の昴」といい、その金のかけっぷりに驚く。日中合作といっても、日本側は、西太后=田中裕子、あとは金を出すだけか。今のところストーリーをなぞっているだけだが、おもしろく展開してほしいものだ。
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