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2010.02.20

丸谷才一●人形のBWH

20100220maruyaningyou

寺内いはく。〔…〕

「源氏[鶏太]さんは、『梟の城』というのは、直木賞に値するかと問いかけてくる。『それは値しますよ』と答えたんです(笑)」

すると、

「『おれはどうも感心しないねえ』と源氏さん。これはまずいと思って、とうとうと『梟の城』のどこがどうだと、司馬君はなぜああいう小説を書いたかというところから始めて、司馬君は私にこう言って、実際にそれを小説の中に実現したことを話しました」

それによると、あの忍者小説は当時の二大新聞、朝日と毎日を書いたものなのださうである。この両社の社会部の特ダネの作り方が対照的で、そのことを書かうとした。つまり新聞記者小説。

朝日は伊賀の忍者の伊賀者。毎日は甲賀者。さういふ違ひがある。

伊賀の忍者は、簡単に言ってしまへば、最後は主君のことなんか、スポンサーのことなんか考へないで、自分の藝そのものにほれ込む。これが朝日新聞。

片や毎日のほうは、あくまでもスポンサーのことを考へ、スポンサーに役に立つやうに忍びをいろいろやる。〔…〕

わたしはこれを読んでびっくりしてね。『梟の城』が朝日新聞と毎日新聞なんて、そんなこと意外きはまる。鳩が豆鉄砲くらつたやうに驚いた。

源氏鶏太もわたしと同じやうに仰天して、つい評価が改まったのぢやないか。

――「道鏡の口説き方」

●人形のBWH|丸谷才一|文藝春秋|ISBN9784163719603200911月|評=◎おすすめ

<キャッチコピー>

「ミシュラン東京版」への決定的批判から直木賞とっておきの秘話まで、愉楽のエッセイ集。

<memo>

おなじみエッセイの名人芸。トリビアの宝庫にして、品格ある猥談、ちょっと余談にして、引用の名手。まず当方が読むことのない本の紹介が、いつも興味津々。上掲は、寺内大吉・永井路子『史脈瑞應』からの引用部分。寺内大吉が語る。「近代説話」仲間の司馬遼太郎が「梟の城」で直木賞候補になり、選考委員の源氏鶏太に寺内が売り込む秘話。

丸谷才一■ 月とメロン

丸谷才一■ 双六で東海道

丸谷才一■ 綾とりで天の川

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