平松剛●光の教会――安藤忠雄の現場
未完の建築も悪くない……。 と安藤忠雄は思う。 「茨木春日丘教会はいわゆる信者が集まる場。教会に人が集まるために、屋根が要るか?」 例えば、青空を望む自然のなかで教会の人々が牧師の話を聞く。それで何か不都合があるだろうか? 雨が降ったら傘をさせばいいではないか。 屋根がなくても教会の礼拝堂として十分成立するのではないか。 予算はないのだから、今回は屋根がなくてもいい。 やがて、数年後に、教会の人たち骨が、屋根をつくるために浄財を寄進する、なんていうのはどうだろうか。そんなふうに全員で屋根をつくっていくなかで、お互いに気持ちをネットワークする、つないでいく。 そんな物語もありえるのではないか。 |
●光の教会――安藤忠雄の現場|平松剛|建築資料研究社|ISBN:9784874606964|2000年12月|評=◎おすすめ
<キャッチコピー>
時はバブルの真っ只中。しかし教会には建設資金がない。不思議なことに、そこに建築家は光明を見いだしていた。だが肝心の設計には未だ光明が訪れない…。ものづくりに賭ける人々が挑んだ苦難と感動を軽妙に描くノンフィクション。
<memo>
安藤忠雄の設計したいくつかの美術館を利用するが、美しさに驚くとともに、維持費と使い勝手の悪さも心配する。安藤という天才を囲んで、そのスタッフ、施工業者のものづくりへの執念、利用者としての発注者の忍耐と“進化”が描かれる。
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