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2010.02.06

白石一文●この胸に深々と突き刺さる矢を抜け

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僕たちは過去から遠い未来へと旅する旅人などでは決してない。僕たちの人生にとって過去などどこにもなく、そして未来などどこにもない。

人間は何千年何万年を生きてきたのではない。

たかだか百年足らずの人生を個別に繰り返してきたにすぎない。過去の人々は僕たちとはまったく異なる、本来何の意味も価値も持ち得ない無味無臭の液体のようなものだ。僕たちに与えられたのは今、今このときだけなのである。〔…〕

過去への未練や後悔、未来への憧懐や畏れ。ただ一度生まれ、わずかな時間で死に滅びてしまう僕たちは、この二つの甘い誘惑につい引っかかりそうになる。偽りの神は現在の中にいるのではなく、そのように過去と未来の中に住んでいる。〔…〕

この胸に深々と突き刺さる時間という長く鋭い矢、偽りの神の名が刻まれた矢をいまこそこの胸から引き抜かねばならない。

●この胸に深々と突き刺さる矢を抜け(上)(下)|白石一文|講談社|ISBN9784062152426 ISBN9784062152433200901月|評=◎おすすめ

<キャッチコピー>

週刊誌編集長、カワバタ・タケヒコ、43歳。妻は東大准教授。本人は上司の妻と、妻は同僚教授とダブル不倫中。3か月の乳児を亡くした過去がトラウマ。さらに、がん患者であり、かつ精神科医にセラピー治療中。職場における派閥闘争、部下の不祥事、スクープ記事をめぐるトラブル。自らのスキャンダルにかかわる暴力事件。世俗の極みで生き続けた男が、本来の軌道を外れて漂い始める、その行き着く先にあるものは? 現代を描き続ける著者が、小説という表現の極限を突き詰めた渾身作。

<memo>

“週刊誌編集長”レベルの新自由主義、格差社会等に関するエッセイ、読書感想文、小論文が随時挿入される。奇異に感じたが、要するに日記だといえる。一日一日の行動・思考を書いた日記を全方位に小説化すればこうなるのではないか。

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