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2010.02.03

古井由吉●人生の色気

20100203huruijinsei

僕が書き初めた頃から、小説の時代が過ぎつつあったんです。

なぜ小説が成り立つか? 前提として、まず、人一般がみんなそれぞれ自分の中で自分のストーリーを持っていることが必要になります。

書き手が、人の心の中のストーリーと響き交わせば、読まれるわけですし、小説を書く人間の方も、書くまでに至る前の自分のストーリーが起点になってきます。

いま、人がストーリーを作ることは変わっていません。でも、その中身が小説的でなくなってきているんです。現代社会は経済中心に動いていますから、事柄が数字で表されることが多くなっています。

本来、ストーリーはアナログでなければならないのに、デジタル表記になってきているんです

小説は、ある出来事のいきさつを書くジャンルです。人一般が、自分のいきさつに関しても、他人のいきさつに関しても、ずいぶん疎くなりました。また、いきさつというのがあったとしても、どこかで妄想的になってしまいます。〔…〕

人の身の上話が、むずかしくなっています。話があったとしても、よく聞いてみれば、マスメディアで社会学者や医者や精神医がいっている、かなり俗に通った筋道で話していることからあまりはずれない。

新鮮なストーリーなど、なかなか見当たりません。

●人生の色気|古井由吉|新潮社|ISBN9784103192084200911月|評=○

<キャッチコピー>

七分の真面目、三分の気まま─。僕はこうして生きてきた。作家渡世四十年、文学の達人が語る人生処方箋。

<memo>

作家や編集者を前に、時代の変化と作家の加齢による“小説を書く”という作業の内側を赤裸々に語っている。

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