中島義道●ウィーン家族-
もうすぐ50歳だ。あと、20年しか生きられない。 いや、もっと短いかもしれない。そのあとは、どうなるのだろう? まったくの無なのか、それとも何かあるのか? 7歳のころから考えてきた。人生において、このことだけが重要な問題だと確信してきた。この確信は、この歳に至るまでただの一度も揺らいだことはない。 その後、まったくの無だとすると、なんで俺は生まれてきたのか? この地上に数十年だけ生きていたことは、何の意味があるのか? 何の意味もないことはわかっていた。だが、この問いを放棄することはできない。その後の人生で、康司はこの問いにしがみついて生きてきた。 |
●ウィーン家族|中島義道|角川書店|ISBN:9784048740005|2009年11月|評=○
<キャッチコピー>
浮気も裏切りもないのに… 史上最悪の夫婦小説。愛のない人間は、生きる資格がないのか。自己愛が強く、絶望的に妻を愛せない大学教授の夫。女の弱さと息子を武器に、夫を執拗に責めたてる妻。研究留学の地ウィーンで繰り広げる、壮絶な家族の、愛と依存の物語。
<memo>
あの“闘う哲学者”の初の小説だというので期待して読んだ。強面の哲学者が、こんなにデリケートな人だったとは。もっとも『ウィーン愛憎』(正続)でファンにはひろく知られている事実の小説化らしい。そちらを読んでみなくては。
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