上田 賢一●上海ブギウギ1945――服部良一の冒険
旅の途中の杭州で、世界で一番美しい湖といわれる西湖に船を浮かべて、服部さんは即興でサックスを吹いた。服部さんはそれまで、東洋の五音階ではなく、西洋の七音階を使って、「東洋の曲」を作りたいと思っていたが、なかなかうまくいかなかった。 だが、西湖に来てみると、そんな曲が自然に浮かび、ボートの上でひとりひそかに快哉を叫んだ。 「それがぼくの『蘇州夜曲』です。ぼくは、アメリカのジャズの物真似ではない、日本のジャズ、東洋のジャズを作りたいとずっと考えてきました。〔…〕 『蘇州夜曲』は、アメリカのスウィート・ジャズと、中国のイメージと、日本人の感覚とをミックスさせたもので、ぼくのイメージの中には上海の強烈な印象がありました。 ですから、『蘇州夜曲』はあの時の上海の体験から生まれたものであると言っていいでしょう」。
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●上海ブギウギ1945――服部良一の冒険|上田賢一|音楽之友社|2003年6月)|ISBN :9784276211285|評=○
<キャッチコピー>
流行歌王、ここにあり。「東京ブギウギ」「蘇州夜曲」は“ジャズの都”上海で生まれた…J‐POPのパイオニア服部良一の生涯を描く力作ノンフィクション。
<memo>
服部良一の上海時代を中心にした評伝。よく調べられてはいるものの、平板……。蘇州は美しい街だが、蘇州夜曲(西条八十作詞)に「涙ぐむよな おぼろの月に/鐘が鳴ります寒山寺」とある寒山寺は、いまや観光客相手のぼったくり寺だった記憶がある。なお、服部良一と蘇州夜曲については、山口淑子・藤原作弥「李香蘭 私の半生」に詳しい。
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