中島義道●人生、しょせん気晴らし
私が個人的に不快なのは、お笑いタレントがいろんなかたちで力を持っていて、あたかも多数派を代表しているように振る舞うことです。 彼らに専門的な知識はないのですが、専門的なことについても意見を言ったりする。〔…〕 私がイヤなのは、わかる努力をしようともしない人のところへ、なぜわかっている人が降りていかなくてはいけないのかということです。 無知な私にわかるように学者や専門家は話すべきだ ――こうした要求を出す人が当然のようにのさばっている状況がある。 わかりやすさ一点張りのテレビの世界が一目瞭然です。 そのわかりやすさの中に、感情のわかりやすさも含めてしまって、だんだん人間的に鈍くなり、単純になっていきます。〔…〕 多くの人が指摘しますが、感受性が単純化しているのです。 ――「テレビよ、さらば!」 |
●人生、しょせん気晴らし|中島義道|文藝春秋|ISBN:9784163711607|2009年04月|評=○
<キャッチコピー>
闘う哲学者が達した境地とは?「ひきこもりと哲学」「美しい不幸」などのエッセイから、究極の読書案内、団塊世代相手の哲学的人生相談など、人気哲学者の最新文集。
<memo>
「20の相談と回答――哲学は人生を救えるか?」が面白い。質問・回答の見出しだけをいくつかあげてみると……。Q 定年後、何をしたらよいか分かりません。A 滑稽です。もっともっと徹底的に悩みなさい。Q 酒と年齢のためか思考力が落ちた気がします。A ボケ防止の最良の薬は「残酷な仲間」をもつことです。Q 歳とともに肥大する孤独との向き合い方。A わずかでも心の通じ合える人がいれば絶対的孤独は避けられる。
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