橋閒石/白燕俳句会●橋閒石全句集
さきごろ、くつろぎの酒の座で、興を添えるため、自作「ありがたぶし」なるものを唄った。〔…〕 わたしゃ冥利に生きながらえて 今日もお酒で暮れまする 低いまくらを高くもせずに あなたまかせの仮枕 に始まる歌詞だが、第二節の終りを 細いからだを軽みというて やがて消えます春の雪 というふうにして結んだ。 これは、自分をありのまま誠実にさらけ出したもので、もし俳諧めいた巫山戯と取られるなら、すこぶる不本意である。 西行は、望月の頃の花の下陰を願ったけれども、 私のばあいは、春雪そのものに化して消えるのが、似合わしいと思う。 ――『和拷』(にぎたえ)あとがき |
●橋閒石全句集|橋閒石/白燕俳句会|沖積舎|ISBN:9784806016113|2003年11月
<キャッチコピー>
橋閒石は金沢の生まれ。神戸にあって終生ふるさとの雪を愛し続けた孤高の俳人。飄飄として宇宙の果てにまで心を通わせる。英文学者にして俳諧師、随筆の達人。
<memo>
「1日1冊連続読破」の最後1冊を、さきごろネットで京都の古書店から入手した本書で締めくくることとした。私のもっとも好きな俳人である。第7句集『和拷』で蛇笏賞を受賞。和田悟朗は解題で「作品中に『春の雪』が多く出てくるが、その感覚は初期から一貫したもの」と書いている。『和拷』から雪の句をいくつか抄出。
まさしくは死の匂いかな春の雪
向き合うて陰さらに無し春の雪
朱鷺色の衿裏なりき雪の宿
老いぬるやいろは混りのはだれ雪
たましいの暗がり峠雪ならん
こなゆきこゆき雪のでんでん太鼓かな
雪ふれり生まれぬ先の雪ふれり
なお、「1日1冊連続読破」は1447日で中断する。
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