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2010.03.06

上原隆●にじんだ星をかぞえて

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彼は単身赴任生活をしている。

18年はいささか長いですよ」と木戸が笑う。白髪の交じった髪を七三に分け、上等なスーツを着ている。〔…〕

9年前、A銀行が経営破綻した。

銀行がすべてだった木戸は途方に暮れた。〔…〕

「女房は」木戸は右手で上昇していくグラフの線を示す。「こう成長してる。それに比べて、私の方は銀行が破綻してから、下降する一方なんです。気持ちの方も少しずつ離れていきました」

木戸がたまに名古屋に帰っても、子どもたちは友だちと遊び、妻はヨガ教室に行き、誰も相手をしてくれなかった。

「ある時ね」木戸が笑う。「夕食の用意を手伝おうと思って、食器を出してたんですよ。そしたら、私の茶わんがないんだ。

女房にきいたら『ごめん、普段使わないからしまっちゃった』ってイヤでしたね」

――「枇杷の木」

●にじんだ星をかぞえて|上原隆|朝日新聞出版|ISBN9784022616159200906月|文庫|評=○

<キャッチコピー>

7年に及ぶ母の介護を終えた娘、定年退職の日を迎えた中卒サラリーマン、腐らずもがき続けたベテラン漫画家─普通の人々のささやかな日常に光を当てたノンフィクション・コラム。読み終えたあと、生きることへの希望、勇気がわく31編。

<memo>

あいかわらずしんみりさせてくれるノンフィクション・コラム。

上原隆■ 雨にぬれても

上原隆■ 雨の日と月曜日は

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