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2010.03.30

立川昭二●人生の不思議

20100330tatekawajinsei

〈さまざまの事思ひ出す桜かな〉と詠んだのは芭蕉であったが、〈さまざまに心狂はす桜かな〉と胸さわぐ思いを詠んだのは功なり名をとげた72歳の杉田玄白であった。小林一茶も〈死支度致せ致せと桜かな〉と、桜に死を思う。

もし「桜の木の下には何が埋まっていると思うか?」といきなりたずねられたら、だれし答えにつまる。ところがここに、こう言い切った人がいる。

 桜の樹の下には屍体が埋まっている!

名作『檸檬』で知られる梶井基次郎である。〔…〕

ところで、近ごろ、なんと桜の木の下に自分や家族の骨を埋める人が出てきた。埋葬法の一つとして最近「樹木葬」ということが行われるようになったからである。〔…〕

樹木葬の場合、屍体を埋めるのではないから、梶井基次郎の言うように、屍体から出る液体が桜の樹の「維管束のなかを夢のようにあがってゆく」ということはないが、

骨の主の魂が桜の根から幹へと上り、花を咲かせると幻想してもいいのではないだろうか……。

――「桜の樹の下には」

●人生の不思議|立川昭二|新潮社|ISBN9784103647058200909月|評=○

<キャッチコピー>

幸福や安心より「不思議」を見つめて生きると人生は味わい深くなる。とりわけ、年をとれば…。こころに響く珠玉のエッセイ集。

<memo>

小説・短歌・俳句を題材に、夫婦・老年・人生・生死という四楽章のエッセイ集。

立川昭二◆年をとって、初めてわかること

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