池谷薫●人間を撮る――ドキュメンタリーがうまれる瞬間
ドキュメンタリーの取材にあたっては、何よりもまず登場人物との間に信頼関係を築くことが重要だ。しかしそれは、決してズブズブのぬるま湯の関係になることを意味しない。 ドキュメンタリストにとって、取材対象との距離をどう取るかは永遠のテーマと言えるほど難しい問題だ。 私の場合、その人を好きになればなるほど、どこかもう一方でその人のアキレス腱を探している自分がいる。 生来のひねくれた性格がそうさせるのだが、人間的な弱さにまで踏み込むことで、一層その人物を魅力的に見せることができると信じているからだ。 しかし、時には抑えがたいはどのシンパシーを抱き、危険を察知しながらその人に溺れていくことがある。「惚れてはいけない」と思いつつ……。 ――「欲望」を撮る |
●人間を撮る――ドキュメンタリーがうまれる瞬間|池谷薫|平凡社|ISBN:9784582824513|2008年05月|評=◎おすすめ
<キャッチコピー>
『蟻の兵隊』『延安の娘』はこうして生まれた――日中戦争、文化大革命、一人っ子政策…国家に翻弄されながら生き抜く人間とは。中国を舞台に数々のドキュメンタリーを世に送り出した著者の衝撃の告白。
<memo>
「ドキュメンタリーを撮るという行為そのものにこだわってきたのではないのだ。〔…〕ただそのドラマとは、職業的な俳優が演じるつくられたものでなく、生身の人間がある種の極限状態に追い詰められた時にみせる、一瞬の生のほとばしりを捉えることにあったと思う」(あとがき)
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