山平重樹●実録神戸芸能社――山口組・田岡一雄三代目と戦後芸能界
清川虹子の自宅で、田岡、旭・ひばり夫妻、高倉健・江利チエミ夫妻とが顔を揃えたことがあった。 皆で談笑している折、何かの拍子に、高倉健が小林旭の腕時計に目を留め、 「おっ、いい時計ですね」 と誉めた。〔…〕 「よかったら、どうぞ。これ、健さんに差し上げますよ」 と腕時計を左手首から外しながら、気前よく申し出た。〔…〕 「いいじゃないですか。僕もこうやって、いったん出した以上、引っ込めるわけにはいきませんよ。もらってやってください」 「いえ、そういうわけにもいきません」 「僕に恥をかかせないでくださいよ」 2人の遣りとりは、傍で見ていても少し険悪なムードになりつつあった。〔…〕 親友同士である2人の妻――ひばりとチエミも、少しハラハラしだした。 そのとき、絶妙のタイミングで2人の間に入ったのが、田岡であった。 「健さん、もらっとき。気にせんでええ。その代わり、旭にはワイのをやるよってな」 と、自分の腕時計を外して、旭に差し出したものだ。 それは力道山からアメリカ土産としてプレゼントされた世界最高といわれるオーディマ・ピケだった。
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●実録神戸芸能社――山口組・田岡一雄三代目と戦後芸能界|山平重樹|双葉社|ISBN:9784575301724|2009年11月|評=○
<キャッチコピー>
三代目山口組・田岡一雄組長が戦後、「庶民に娯楽を」の名目で立ち上げた伝説の興行会社・神戸芸能社の栄光の軌跡とその終焉を初めて描いた本作品。大物芸能人と田岡組長とのエピソードも満載で、戦後芸能史の貴重な資料となる一冊。
<memo>
田岡三代目、絶賛本。
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