金原瑞人●翻訳のさじかげん
このごろ、「美しい日本語」とか「正しい日本語」とかうるさいほど耳にするけれど、そんなものはない。〔…〕 作家であれ翻訳家であれ、いや、ごく一般の人であれ、文章で問われるべきは「正しい」とか「美しい」とかではなく、(その時代において、その状況において、読者にとって)「効果的であるかどうか」「本人の伝えたいものが伝わっているかどうか」だと思う。 言葉というのは、伝えるためにあるものなんだから。〔…〕 あらゆるものは時間がたてば古びる。もちろん古びても、なお次の時代に通用するものもある。しかし、そういったものが「本当に価値がある」ものであるかどうかもまた定かでない。 そもそも、そのまた次の時代に通用するかどうかはわからない。というか、そういう絶対的な価値などおそらくないのだ。 ――「古びない言葉なんてない」
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●翻訳のさじかげん|金原瑞人|ポプラ社|ISBN:9784591108789|2009年03月|評=○
<キャッチコピー>
料理に骨董、三味線に歌舞伎…翻訳しているヒマがない?人気翻訳家の最新エッセイ集。
<memo>
食・言葉・翻訳などに関するうんちくエッセイ。
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