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2010.04.20

手嶋龍一●スギハラ・ダラー

20100420teshimasugihara

「デュマの『三銃士』は何語でお読みになったのかしら、スティーブン。流浪の日々を送った私にとって『三銃士』こそ、わが黙示録でした」〔…〕

「ミレディーがダルタニアンの策謀にかかって孤城に幽閉され、凄まじいばかりの呻き声をあげる場面を憶えておいでかしら。復讐のためにわが身を自由に解き放たねばと思いつつ、女の細腕では何ともならぬと呪う場面――」〔…〕

ソフィーは「エウロペの略奪」を見上げて、ミレディーの言葉を朗誦した。

「いまこうして戦っている相手は男ばかりだ。あの連中にとって私はか弱い女でしかない。ならば、女として戦おう。

わが力の源はおのが弱さのなかに在る

ソフィーは艶然と微笑むと、立ち上がってセーヌ川を見下ろす大きな窓へと歩み寄った。しばしの間、川面を行き交う船を眺めながらシガレットをかざす横顔が端整だ。

●スギハラ・ダラー|手嶋龍一|新潮社|ISBN9784103823049201002月|評=◎おすすめ

<キャッチコピー>

『ウルトラ・ダラー』の名コンビ、マイケルとスティーヴンが再び登場。9.11にも金融恐慌にも仕掛人がいる……。杉原千畝が救ったポーランド難民が革命的な金融商品を産み続けて半世紀、その苦難の航跡がすべての始まりだった!

<memo>

『わが力の源はおのが弱さのなかに在り』。手嶋作品は、衒学趣味を好むか嫌うかで、評価が分かれる。

ところで、かつてロシアの貴族だったモロゾフの一族が亡命し、その名を冠したチョコレートを売りだして財をなした。そのモロゾフ一家が構えていた邸宅が、神戸・北野町4丁目界隈のユダヤ教のシナゴーグの裏手にあり、土地の人々がその私道を「モロゾフの小径」と呼ぶ。……との記述がある。そんな道、ありましたか?

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