森下香枝●史上最大の銀行強盗―― 5億4000万円強奪事件
日本の犯罪史上、最大の銀行強盗事件をご存知だろうか?〔…〕 94年夏、神戸・元町のど真ん中で銀行の現金輸送車から5億4000万円が詰まった3つのジュラルミンケースが瞬く間に掻っさらわれた。 犯行はわずか3分足らず。繁華街の死角を大胆についた映画のようにスリリングな事件だった。 最大の銀行強盗をやってのけたのは互いに名前も知らない二人組の男たちだ。 犯人の一人は97年末、逮捕寸前に自殺。 もう一人は強奪金を持ったまま、逃亡し、兵庫県警とICPOによって99年10月、国際指名手配された。〔…〕 国内史上、最大の銀行強盗事件はついに時効を迎えた。7年と8ケ月――。〔…〕 「警察は負けたんだよ。あのバカどもは時効前、彼を国(日本)から出したとは夢にも思ってなかったでしょうよ。昔、一度だけ逮捕するチャンスをあたしが作ってあげたのにね。あの時は、本気だった。バカですねえ。ま、バカのおかげで助かったんだけど」 |
●史上最大の銀行強盗―― 5億4000万円強奪事件|森下香枝|幻冬舎|ISBN:9784344003880|2003年09月|評=○|≪KOBE百景≫
<キャッチコピー>
94年夏、福徳銀行神戸支店での事件発生から8年―。整形して逃げる主犯の男、警察にタレ込みながら追う女。奇妙なふたりの愛憎劇が捜査を混乱させ、時効に導いた。日本犯罪史上、最大の銀行強盗事件の真相が今、明らかに。
<memo>
1984~85年グリコ・森永事件、1987年朝日新聞阪神支局襲撃事件、そして1994年この5億4000万円事件……、いずれも未解決のまま兵庫県警本部は、1995年阪神・淡路大震災、1997年神戸少年A事件を迎える。それにしても緻密さに欠けるこの事件の二人の犯人の言動を知るにつけ、時効になってしまった兵庫県警の捜査の杜撰さにあきれる。当時JR元町駅と大丸神戸店との間に「絆」というスナックがあり、わたしはよく飲みに行っていた。そのわずか数軒西に位置する銀行が狙われるとは、その地理的条件から信じられなかった。あとがきに、登場人物は真犯人・森本喜博以外、すべて仮名としノンフィクション・ノベルだ、としている。本書はソウル在住の安美貞という謎めいた女を中心に展開し、捜査の県警は脇役に過ぎない。いわゆる事件ものとはやや異なる視点で描かれる。
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