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2010.05.24

坪内稔典●モーロク俳句ますます盛ん――俳句百年の遊び

20100524tuboutimoroku

かつてフランス文学者の桑原武夫は言った。「かかるものは、他に職業を有する老人や病人が余技とし、消閑の具とするにふさわしい」と。

「かかるもの」は俳句だが、ほんとうにその通りだなあ、と思う。俳句はとても非生産的、金にならないし、名誉や地位にもあまり関係がない。こんなものは、非生産的なことに没頭できる老人がやるにふさわしい。〔…〕

なぜ、老人たちは俳句を好むのだろうか。思いつく理由を列挙すると、

  作り易い。②金があまりかからない。③仲間ができる。④句会や吟行で出歩くので運動になる。⑤文化的な香りが少しする。⑥ぼけ防止になりそう。以上のようなことを思いつくが、厚労省が喜びそうなことばかり。

もちろん、右に挙げたことは大事な要因だが、ほんとうは、言葉数が極端に少ないことが老人を引き寄せているのではないだろうか。

ぐだぐだとたくさんの事を言いたくはない。自己主張もしたくない。そんな気分が、俳句に老人を引き寄せている。桑原先生には「第二芸術」と決めつけられたが、非生産性に徹したこの言葉遊びはやめられない。

●モーロク俳句ますます盛ん――俳句百年の遊び|坪内稔典|岩波書店|ISBN9784000253055200912月|評=○

<キャッチコピー>

俳句は平易に愉しむもの。仲間といっしょに笑うもの。モーロク程度がちょうどいい!俳句を愛するネンテン先生が、俳句作法、俳句の歴史、今日的俳句までを説く、軽妙ナルホド評論・エッセー集。

<memo>

本書収録の著者と上野千鶴子との対談「俳句はどこへ?」は、山頭火、放哉、西行など“漂泊者”に触れて、こんな発言。

上野 「願はくは花のしたにて春死なん」の歌も、考えてみたら俗気たっぷりで未練気があります。その西行がなぜ漂泊者の系譜の原型になってきたかというと、彼の生き方と表現の中に詠嘆の調べがあるからです。つまり短歌というのは、詠嘆の形をとったナルシシズムと抒情への耽溺を許す詩型なのです。〔…〕 詠嘆を許すというのは、そこで自己完結するということですね。私は自己愛だとはっきり言いたいんですが。

坪内稔典■ 上島鬼貫

上野千鶴子■上野千鶴子が文学を社会学する

上野千鶴子◆おひとりさまの老後

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