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2010.05.07

逢坂剛●剛爺コーナー

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そういえば今春、村上春樹による新訳『ロング・グツドバイ』が、刊行された。

半世紀近く前の、清水俊二の初訳『長いお別れ』になじんだ世代には、どこか違和感を覚える人もいるだろう。かくいう剛爺も、その一人である。

あきらかに村上訳は、清水訳の省略部分や誤訳部分を補い改め、現代風にフレッシュアツプされている。村上氏も、あとがきで清水氏に最大限の敬意を払っており、清水訳に触発された部分もあることを、正直に認めている。

もしかすると剛爺の場合は、チヤンドラーではなく清水俊二の訳文体に引かれた、という方が正しいかもしれない。

村上訳は、はるかに原文に忠実に訳されているようだが、率直なところ「チヤンドラーはこんなに餞舌だったのか」、という印象を抱いた。

事実、チヤンドラーは餞舌だったのだろう。彼の初期の作品、ことに三人称で書かれた中短編は、ハメットの強い影響を感じさせる、きびきびした客観描写の文体だったのだが……。

●剛爺コーナー|逢坂剛|講談社|ISBN9784062161060201003月|評=○

<キャッチコピー>

日本推理作家協会の理事長だった著者が同協会報に2001年から8年間連載した名物エッセイ集。ミステリーの舞台裏、作家の本音、文学賞についてなど変幻自在。

<memo>

出版不況に悪戦苦闘する業界団体としての推理作家協会の日々。

レイモンド・チャンドラー■ 長いお別れ

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