朝倉かすみ●ぜんぜんたいへんじゃないです。
札幌市内の書店には、京子をご存知のかたもいらっしゃると思う。なぜなら、京子は、たまに「朝倉かすみの母でございます」と挨拶しているらしいからだ。〔…〕
京子はB書店の名を口にして、 「あそこの本屋さんはなにかいってなかったかい?」 と訊く。大型書店だ。〔…〕
B書店で女性店員に「ご挨拶」をしたら、「店長さんみたいな男のひと」が現れて、店の奥に案内され、「お茶をのませてもらったの」とのことである。
一瞬、絶句したのち、そのような行為は慎んでもらいたい旨、わりと語気荒く申し入れた。親が書店に挨拶して回る作家なんて聞いたことがない。
しかし。だれもやらないことをやらなくてどうする、というのが京子の言い分だった。親がこどものために頭を下げてなにがわるい、とつづける。
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●ぜんぜんたいへんじゃないです。|朝倉かすみ|朝日新聞出版|ISBN:9784022506863|2010年03|評=△
<キャッチコピー>
『田村はまだか』で人気急上昇、今いちばん注目される若作手家(だが今年50歳)の、「ぜんぜんたいへんじゃない」日々を綴る人生前向き初エッセイ。
<memo>
新人作家の謙虚な日常はさしたる事件もなく……。
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